データ利用事例

 国土管理

地図作成における ALOS 利用
国土交通省国土地理院 測図部 測図技術開発室 南 秀和

■ はじめに、目的

 政府が国土を管理する上で、また、様々な社会経済活 動が営まれる上で、国土の現状を正確に把握した地図は不可欠である。国土交通省国土地理院(以下、「地理院」 と言う。)は、日々、地形や地物の変化を把握し、その情報を基本図等に表現し提供している。これらは、官民で作成される様々な地図にも利用されている。
 地理院が整備する様々な縮尺の地図のうち、2万5千分1地形図は、我が国全体をカバーする最大縮尺の地図であり、国の基本図として活用されている。この2万5千分1地形図を作成するため ALOSデータを利用した。


■ ALOS データを利用するにあたって

(1)位置精度の向上
地図を作成するため、特に国の責任において作成される地図については、正確な位置の情報が不可欠であり、 それらは一般的に現地測量や航空機から取得された写真から求められてきた。 地図作成にALOSを使用するにあたっても、同様に高い位置精度が要求されることから、地理院では ALOSを運用するJAXAにおけるALOSの位置精度向上の取り組みのため、JAXAへの地上基準点(GCP)の提供や画像の評価・検証などを実施してきた。その結果、ALOSの位置精度は向上し、2008年3月現在において水平方向(直下視、GCPあり)3mという高い精度の結果を得ることができた。


写真 1 図化機による立体視

(2)RPC ファイルによる位置合わせ
地図作成に必要な地形・地物の3次元の位置情報は、 例えば、航空写真の場合、同じ場所を撮影した2枚の写真の写り方の違いにより求められる。ALOSの場合も同様に、2〜3 方向から観測する PRISMセンサから取得された画像を図化機(ソフトウェア)を用いて立体視を行い、画像上の地形・地物を描画(図化)することにより、地図を作成するための位置情報を求めることができる。 衛星写真からの図化の結果を地図にするために必要な衛星画像と地上座標の位置合わせは、一般的にRPC(Rational Polynomial Coefficients)と呼ばれるモデルを利用して行う。RPCモデルは、画像座標と地上座標の関 係を高精度に近似した有理多項式で表現したものであり、衛星画像毎に最適なパラメータを与えることより画 像座標と地上座標の相互変換が可能となる。 これらのパラメータを記述した「RPCファイル」は、 多くの図化機で位置合わせの方法として採用され、軌道情報などの設定や基準点を用いた手動での位置合わせは 不要(高精度なものを求めない場合)であることから、 作業者は画像とセットで購入する RPC ファイルを図化機に読みこむだけで、位置合わせの工程を容易に行うことができる。 ALOS/RPCについては、2007年から2008年にかけて主要な市販の図化機が次々と対応し、地図作成のみならず、標高データ作成やステレオ視による地形解析など 立体的モデルを構築することが可能となり、ALOSの利用分野がさらに拡大するとことが期待される。

(3)RPC ファイルの適用性の検証
 ALOS画像を地理院の地図作成に利用するため、ALOS / RPC を利用した図化のための精度検証を行った。 その結果、標高点の取得については基準を満たさなか ったものの、水平位置描画及び等高線描画については、 GCP での補正を踏まえることを条件に、共に地理院の2万5千分1地形図の作成基準をクリアすることが可能で あることが確認された。このように地図作成ための3次元の位置取得について、ALOS/PRISM及びRPCファイルの有効性が確認された。。


■ 地図作成における ALOS 利用


図 1 25 年ぶりに修正された硫黄島の地図

位置精度の向上及びRPCファイルの活用により、国の基本図である2万5千分1地形図修正に今後もALOS画像の利用が期待される。 ALOS画像は、航空写真に比べて解像度は低いものの、1シーンに広い範囲が含まれ、また歪みの少ない画像を高頻度で入手できるため、大規模建物等の修正等に有効であり、航空写真と相互に補完しあうことで、迅速で効率的な地形図の作成・修正に寄与することが期待される。 更に、離島や南極等の空中写真撮影が困難な地域においては、衛星画像の特徴を十分に活かすことが期待され、平成19年度には、「硫黄島」の25年ぶりの地形 図修正や、これまで困難であった「竹島」の地形図作成のための高精度の位置決定が ALOS 画像を利用して行われた。

図 2 竹島の地図(2 万 5 千分 1 地形図「西村」の一部)及び
位置精度確保に使用した ALOS 画像の撮影方法


■ 今後への期待

 Yahoo! 地図は、地球・世界規模での最新情報をユーザーと共有したいと考える。地球からは見えない画像が見える点が衛星写真の大きな特徴であり、航空管制が厳しい海外でさらに効果を発揮する。Yahoo! 地図のユーザーが見たいときに世界中で見られるサービスをALOSデータを使って実現し、また衛星写真を通じて地球にもっと関心を持ち、環境保護などエコ社会へ意識を高めたいと考える。

▪ Yahoo! 地図 http://map.yahoo.co.jp


図 3 Web 上での地形図データとの重ね合わせによる 変化抽出の試み
その他の利用事例はこちら(別ウインドウで開きます。※要Flash Plugin)

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